【原書タイトル】The Innovator's Dilemma
技術の目まぐるしい進化が起きている現代において、多くのビジネスマンにとってイノベーションによる既存産業の破壊は対岸の火事ではない。
『イノベーションのジレンマ』は、将来の破壊的技術の出現の脅威への対処法や心構えのヒントを与えてくれる。
マーケットリーダーが、顧客の意見に耳を傾け、新たな技術への投資を続けたとしても、技術や市場構造の破壊的変化に直面した際に、市場におけるリーダーシップを失ってしまう現象に対し、初めて明確な解を与えたのが本書である。
技術には、製品の性能を向上させていく持続的技術と破壊的技術がある。
企業は日々のオペレーションや既存の顧客に対するマーケティングを通じて、既存の評価基準に従って持続的技術により既存製品の性能を高める取り組みを行っていく。
投資家や消費者の期待に応えるという意味で、この取り組みは決して間違いではない。
破壊的技術はその特性上、最初は既存製品よりも明らかに性能が劣っており、ターゲットとなる顧客の規模も小さいため、登場した当初は市場のリーダーにとっては危機としては認識されない。
しかし、その後破壊的技術はイノベーションを実現した時、マーケットに新たな評価基準を作り出し、既存の商品の性能を引き下げてしまう。
イノベーションのジレンマの具体例として、最も有名なのがカメラである。
かつてカメラメーカーはより高品質のカメラの開発という持続的技術の取り組みを行っていた。
カメラ付き携帯電話が登場した際も、その性能は通常のカメラよりも劣るものでカメラメーカーも脅威としては認識されていなかった。
しかし、携帯電話に付属するカメラの性能が、消費者の一定の期待を超えた時、消費者は一気にカメラへとシフトするのである。
カメラメーカーがそのことに気づいたときにはもう遅いのである。
イノベーションの脅威に対する対応策については本書にも記載されているし、最近の理論であれば「両利きの経営」による知の探索なども有効ではある。
説明だけでなく、クレイトン・クリステンセンの文章自体も洗練されていて読み物として知的興奮を覚える経営戦略の名著である。
目次
第1部 優良企業が失敗する理由
第1章 なぜ優良企業が失敗するのか- ハードディスク業界にみるその理由
第2章 バリュー・ネットワークとイノベーションへの刺激
第3章 掘削機業界における破壊的イノベーション
第4章 登れるが、下りられない
第2部 破壊的イノベーションへの対応
第5章 破壊的技術はそれを求める顧客を持つ組織に任せる
第6章 組織の規模を市場の規模に合わせる
第7章 新しい成長市場を見いだす
第8章 組織のできること、できないことを評価する
第9章 供給される性能、市場の需要、製品のライフサイクル
第10章 破壊的イノベーションのマネジメント-事例研究
第11章 イノベーションのジレンマ-まとめ
「イノベーションのジレンマ」グループ討論の手引き
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