ビジネスマンとして数々の業績を残してきて「日本資本主義の父」と呼ばれる渋沢栄一の講演の内容をまとめたものが「論語と算盤」である。タイトルの論語は倫理、算数はビジネスである。
官僚から実業家に転じた渋沢が、資本主義の時代に移りゆくなかで「ビジネスと倫理」をどのように捉えていたかをこの本は教えてくれる。
私にとってもビジネスにおける行動規範を根本的に考える上で、人生の指針を与えてくれた本。
是非、学生や若手ビジネスマンに一度読んで欲しい。
企業が利益を出すことは必要であるが、強欲になってはならない。起業は国家や社会全体の繁栄を考えたビジネスを追求すべきであり、そこで働く個人も自己研鑽を続けて、ビジネスの発展を実現すべきであると、渋沢は説く。
行動規範を形づくるものが、欧米ではキリスト教であるのに対し、日本においては論語なのだと思う。
現実世界で物事を判断するという時に、何を考える必要があるか、どのように判断を積み上げていくかのプロセス、そして自身の判断を社会の発展に寄与するかを説明してくれる。
企業と国家(社会)、企業と個人の倫理という本質的な問いに対する答えを与えてくれて、その思想は現在企業経営のテーマになっている「SDGs」や「ESG」に通じるものがある。
原文にトライしたこともあるが消化不良に終わったこともあり、時代背景も現代と異なることがあるので、最初に読むのは解説付きの現代語訳の方がおススメです。
第1章:処世と信条 第2章:立志と学問 第3章:常識と習慣 第4章:仁義と富貴 第5章:理想と迷信 第6章:人格と修養 第7章:算盤と権利 第8章:実業と士道 第9章:教育と情誼 第10章:成敗と運命
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