実際にCAPMを使用して、特定の銘柄の期待リターンを計算してみましょう。
マーケットに対するリターンが12%で、同期間のリスクフリーレートが3%の時、マーケットリスクプレミアムは 12 – 3 = 9%となります。
現在のリスクフリーレートが2%の時、個別銘柄のβ=1の時、β=2の時、β=0.5の時のそれぞれの場合の要求リターンは下記の通りとなります。
βが1の時: 2 + 9 × 1 = 11.0%
βが2の時: 2 + 9 × 2= 20.0%
βが0.5の時: 2 + 9 × 0.5 = 6.5%
1年後のとある銘柄の株価と配当、それぞれの株価となる確率が下記の表の時を考えてみますよう。
この株式のβが0.75、マーケットリスクプレミアムが10%、リスクフリーレートが2%だった時この株式の現在の株価はいくらでしょうか。
まずは、CAPMによってこの株式に対する要求リターンを計算します。
0.75 × 10 + 2 = 9.5%
次に1年後のキャッシュフローを計算します。
50% ×95 + 30% × 110 + 20% × 130 = 106.5
将来期待されるキャッシュフローを、上記の割引率で割り引くことにより現時点の株価を算定することができます。
106.5 ÷ 1.095 = 99.09
ある製薬会社が、新薬の開発を行っています。新薬の開発に成功した場合、その会社の株価は200円に上がると予想されています。
しかし、開発が失敗した場合、100円の株価と予想されています。
この会社の1年後の株価は新薬開発の結果のみによって左右され、マーケットや経済の影響を受けないと仮定します。
新薬開発の成功確率が50%で、リスクフリーレートが3%の時、現在の株価はいくらになるでしょうか? なお、配当の支払いは考慮しないものとします。
まずは、1年後のキャッシュフローを計算します。
50% ×200 + 50% × 100 = 150
この例題では、この企業の株価はマーケットや経済の影響を受けないものとされています。
つまり、この製薬会社の株式のリスクに関しては、マーケットのリスクは完全に取り除かれているということになります。この場合のβはゼロとなります。
βがゼロですので、CAPMにより計算すると、この製薬会社に対する要求リターンはリスクフリーレートと同じということにあります。
したがって、この会社の株価は 150 ÷ 1.03 = 145.63 となります。
非常に稀なケースですが、ある銘柄のリターンが、マーケット全体のリターンが負の相関の関係にある時、その銘柄のβは0を下回ることがあります。
その場合、その株式はトータルで正のリスクを伴うにも関わらず、その株式に対する要求リターンはリスクフリーレートとよりも低いということが起こりえます。
そうした株式はリスクフリーの金融商品に投資する際よりもリターンは低いことになりますが、ポートフォリオの他の株式のリスクを相殺する株式としての需要があります。
その株式をポートフォリオに追加することによって、ポートフォリオ全体のリスクを減少させることができるのです。
1つ例を示してみましょう。
ある投資家の保有するポートフォリオが、A社株式500万円(β=1.0)、B社株式200万円(β=1.5)、C社株式100万円(β=0.7)で構成されている時、
このポートフォリオ全体のβは、
1.0 × 5/8 + 1.5 × 2/8 + 0.7 × 1/8 = 1.09 です。
このポートフォリオに対して、β= -0.5のX社株式200万円を追加すると、
1 × 5/10 + 1.5 × 2/10 + 0.7 × 1/10 + 0.5 × 2/10 = 0.77 となります。
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