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執筆者の写真Gary Tanaka

MBA経営戦略⑤:プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント(PPM)

更新日:2021年4月29日

一般的に、企業は創業した時は特定の1つのビジネスからスタートします。

しかし、成長して規模が拡大につれて、顧客の範囲や商品・サービスの範囲が拡大し、異なる複数のビジネスを展開することになります。


CEOなどの経営陣は複数のビジネスを展開する際、リソースの配分について以下の問いに考える必要があります


  • どのビジネスにリソース(資金・人材) を重点的に投資するか?

  • どのビジネスへのリソースの配分を減らすのか?

  • どのビジネスから撤退するべきか?

  • 新たなビジネスへと参入・進出するべきか?


この問いに応える際の難しいところは、それぞれのビジネスの個別最適ではなく、すべてのビジネスを考慮した全体最適を考えていく必要があるということです。


また、それぞれのビジネスが相互にサポートすることによる「シナジー」が存在する場合には、「シナジー」についても考慮する必要性が生じます。


では、どのように上記の質問に対する答えを導けばよいでしょうか?


この記事では、ボストンコンサルティンググループ(BCG)の開発した、プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント(PPM)について説明します。



BCGのPPMは以下の図のように2 × 2のマトリクスで絵が描かれます。





縦軸はあるビジネスのマーケット全体の市場成長率、横軸は業界における相対的なマーケットシェアを記載します。


横軸については相対的なシェアで、自社以外でトップシェアの企業の売上高を1とした場合の自社のシェアを記載します。


例えば、自社のシェアが業界内で1位の場合は2位の企業との比較で1.0以上となり、自社のシェアが2位以下の場合は1位の企業と比較することになり1.0未満となります。


この市場成長率の縦軸とマーケットシェアの横軸によって4つのスペースに分けて、その象限ことにリソースの配分を変えるということがPPMの基本的なアイデアです。


そして、それぞれのビジネスは市場成長率とマーケットシェアに応じて以下の4種類に分類されます。


 

左上のスペースです。ここでは、市場は成長しており、かつ自社はマーケットでのシェアを相応に維持できています。


マーケットのポテンシャルもシェアも魅力的なビジネスではありますが、マーケットのポジションを維持するには、大規模な投資を継続する必要が生じます。


PL上は利益が出ていても、キャッシュフローは設備投資によってマイナスになるということも多いのです。


ここでは、大型投資を継続して、マーケット内でのポジションを維持し、将来の「カネのなる木」へと育てていくことが基本的なストラテジーとなります。

 

左下のスペースです。マーケットの成長もストップしておりマーケットは縮小に向かっていますが、過去の投資が奏功して競争し勝ち抜き、シェアを維持しているポジションになります。

市場が成長していないということは、これ以上追加での投資をする必要がないというポジティブな面もあります。

つまり、PL上も利益がでていて、投資によるキャッシュの流出も抑えられている状況です。


ここで取るべきアクションは、現状のビジネスからできるだけ多くのキャッシュを回収することです。


オペレーションの効率化によってコストをさげて、極限までキャッシュを生み出していくということになります。市場では縮小していく方向にあり過剰な投資は防ぐべきですので、競合他社の動向も注視しながら投資を抑制していくということが重要になります。


 

右上のスペースです。この象限は市場が伸びている一歩で自社のシェアは小さい形になります。


成長性のあるビジネスに参入できていることは魅力的かもしれませんが、一方でさらなる投資が必要とされる領域です。


マーケットの成長にあわせて、もしくはそれ以上のベースで売上を伸ばせなければシェアを落とすことになり、それが続くとビジネスからの撤退が必要になるからです。

営業人員の拡充や新製品の開発投資など大規模な投資が必要となります。


このエリアでは、投資を継続してマーケットで上位のポジションを目指すか、撤退するかの選択が求められることになります。

差別化することで、さらにマーケット内のポジションを上げることができるのであれば投資を加速し、そうでなければ速やかに撤退します。

どちらも選択せずに、中途半端なまま事業を継続することは悲惨な結果を招くことになります


 

右下のスペースです。マーケットも成長せず、自社のシェアもないという踏んだり蹴ったりの状況です。

ここではキャッシュの流出は最小化して、撤退していくということが基本的なストラテジーとなります。



 

PPMを利用する際に考えなければならないのが「全体最適」です。


企業が継続的に成長していくためには、「問題児」や「スター」への投資が必要となります。

もし、「カネのなる木」しかないポートフォリオだとすると、将来的には市場が縮小して、会社全体も没落していくことになります。つまり、将来の会社の柱となるビジネスへの種まきが必要となるのです。


そのための原資を「カネのなる木」から回収して、「問題児」や「スター」へと配分するということで会社全体のビジネスのポートフォリオをコントロールしていくことが重要となります。

しかし、それぞれのビジネスのリーダにこうした意思決定を任せると、それぞれのビジネスのなかで投資・回収というサイクルが完結してしまいます。

現状利益の出ている事業部のリーダーは、どんどん投資や開発をおこないビジネスを大きくしようとしがちです。


会社のリーダーには、中長期な視点でビジネスポートフォリオをコントロールし、花形の部門から得られたリソースを、他の将来性のあるエリアへと再配分するという冷静な意思決定が必要となるのです。

 

PPMを導入する上で一番難しいのが縦軸と横軸の設定です。


従前は縦軸は●%、横軸は1.0を採用するような画一的な運用がされてきた時期もありました。

しかし、マーケットの変化が激しく、消費者の求めるニーズも多様化している現代においては、画一的な運用ではなく、ビジネスの特性とポートフォリオ全体を考慮した軸の基準を検討していく必要があります。


また、前述の通り複数のビジネスの間で「シナジー」が発生している場合は、あるビジネスの拡大や撤退が他のビジネスにどのような影響を与えるかについても十分な検討がなされなければなりません。



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ブログ管理人:田中ゲイリー

東京都出身。東京大学卒業後、都内金融機関にて投資銀行業務に従事。その後、米国へ留学しMBA(経営学修士)を取得。現在は、上場企業にて経営企画業務に従事する傍ら、副業としてITスタートアップにてCFOとして関与。
Blog Author: Gary Tanaka

CFO of the IT venture company (Data Analytics)

Finance / Corporate Planning / Ex. Investment Banker

University of Tokyo (LL.B) |

University of Michigan, Ross School of Business(MBA)

Tokyo, Japan

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